地域まんまるin鬼無里 レポート

【まんまるの事業レポート】

地域まんまるin鬼無里 「鬼無里でくらし続けるために~交通編~」レポート

日 時:7月25日(日)13:30~16:00

場 所:鬼無里地区活性化センター

参加者:鬼無里地区住民、地区外住民自治協議会関係者、行政、NPO、介護事業者など53人

開会あいさつ(鬼無里地区住民自治協議会事務局長吉田さん)

今回、鬼無里地区住民自治協議会事務局長の吉田廣子さんのつぶやきから地域まんまるを鬼無里で開催することになりました。吉田さんは「自分が今後高齢になり、車を手放したときを考えると、今の交通ではとても暮らせない、かなりの市税を投じて市バスが動いているが、これを住民主体の交通にすることはできないか考えている」とスタッフに話しました。一昨年の小田切地区、昨年の川中島地区と地域交通をテーマに地域まんまるを開催してきました。「なんとかしたい」吉田さんの思い、みんなでアイデアを出し合えば何か良い方法が出てくるのでは?となり。開催に至りました。当日はオリンピック開幕の4連休、コロナ禍にも関わらず53人が集まりました。

◆情報提供◆

「地域公共交通を考える」轟直希さん(長野高専准教授)

そもそも日本の公共交通は海外とはどんな違いがあるのか? フランスやドイツは公共交通サービスは行政が行うもの。基本的人権で交通権を規定するなど移動は国民の権利ととらえている。では、日本は? 日本は民間事業者が公共交通を担い、国が支援する形。ビジネスとして成立しなければ撤退もあるという状況。行政としては地域公共交通の維持が役割となっていて、事業者の役割は安全や利便性を保障すること。

では、市民の役割は? 地域公共交通を支えるために市民も積極的に関わることが大切と轟さん。現役世代がマイカーにばかり頼っていると公共交通は維持できなくなることは今の長野市内を見回せばわかること。今後に向けてみんなで考え、対話し、意識を変えていくことが必要。

事例として、一つは豊岡市の市営バス「イナカー」と住民主体の「チクタク」を紹介。最低限の利用を確保するための分析に基づいてサービスを分けている。また、氷見市ではNPO法人が運行するバスを紹介。しかし、ドライバーの高齢化の課題はある。

最後に、長野市がSDGs未来都市に選定されたことから、SDGsの観点からも公共交通の維持は必要不可欠なターゲットとなっていることを説明。

「鬼無里地区市バス運行・利用状況」 市交通政策課

現在鬼無里地区内を走る市バスについて、人口動態やこれまでの利用の推移を提示。人口減少と共に市バスの利用人数も減少、ここ数年市が1600万円を負担しているとのこと。また、他の中山間地を走る市バスや乗り合いタクシーと比較しても一人当たりの市の負担額はかなり高額になっていることがわかった。地区内はどの路線も200円で乗れるが、本数はかなり少なく、毎日走らない地区もあり、利用する側も運営する側も苦しい状況。

 

「小田切地区地域たすけあい事業再編について」

柳澤厚史さん(小田切地区住民自治協議会事務局長)

小田切地区では、一昨年から約1年半かけてモデル地区として「地域たすけあい事業」(住民自治協議会と社協協働の取り組みで、家事援助と福祉自動車がある)の再編に取り組んだ。住民有志と福祉関係部会、地区内のNPO関係者、地区に拠点をもつ高校などからなる「和輪話の会」が中心となり議論を重ねた。この7月1日、行政や社協との調整も含めて完了しその名も「お互助っ人(おたすけっと)」事業の実施に至った。これまで地域たすけあい事業の福祉自動車ではできなかった買い物支援をはじめ、ゴミ出しや草刈りなどさまざまなたすけあいの活動ができるようになった。また、移動支援では、サロンへの足として役員や地区内住民がマイカー移送していた活動もたすけあい事業に位置付け、社協が保険に加入し無償で送迎をする。小田切地区にはデマンドバス「かつら号」もあり、特に地区内の移動が充実したと報告。

 

◆ワークショップ(意見交換)◆

前半の情報提供を受けて、参加者全員で意見交換。

テーマ1「今の自分の地域の交通に満足していますか?その理由は?」

一見満足・やや満足が多いように見えましたが、実は、「今は」「マイカーがあるので」と言う意見が多く、本当の意味で満足しているとも言い切れない状況が見えてきました。また、不満ではやはり運行の本数や時間が生活スタイルと合わない、料金が高いなどの意見が多くありました。バス停までが遠くて歩けないという意見も。

テーマ2「自分のために、家族のために、あったらいいなこんな地域交通」

できるかできないかわからないことも含めてとにかく出してみよう!ということで、さまざまな意見が出ました。

いつでもどこでも乗れる交通は確かに理想で、自家用車やタクシーに近い利便性を公共交通でとの声が多くありました。また、今の技術ならできるのでは?と、イノベーションを求める声も。

自動運転や高齢者でも運転できる車、バスの所在がわかるシステムやCO2が出ない車、ドローンや空飛ぶタクシー、シェアサイクル、自転車ごと乗れる交通機関なども挙げられました。

他にも山間部の住民からは週末の夜だけ遅い時間の便があったら飲んで帰るときにありがたいという声、地区と市街地のノンストップバスなど。各地区から長野駅などの中心部に向かう交通はあるものの、地区内の移動や近隣地区との移動にはまだまだ車が必要なのか?ということも見えてきました。また、通園・通学のために安価な交通を望む声もありました。これは切実です。

テーマ3「テーマ2を実現するために必要なもの(ヒト・モノ・カネ・情報など)は? クリアすべきことは? 地域でできることは?」

すぐにでもできることとして、タクシーの有効活用をはじめ、自分も利用者になる、乗って公共交通を応援するなど利用することで地域の交通を守ろうという意見。イベントなどの企画に外部の力を活かすために、お買い物バスツアーなどをうまくコーディート、企画するというアイデアが出ました。さらに、需要を正確に調査、数字データを意識することから始めようという声もありました。

鬼無里地区出身で市街地に暮らす参加者二人からは、地区を離れた子どもたちもできることがあるのでは?協力者を募りリストアップしてはどうか?と提案がありました。

今あるサービスの規制を緩やかにしてほしいという意見も多く、法律の壁と経済的な自立をどう調整するのか?実現に向けて何をどうしたらいいのか?財源をどうするのか?どうしてもこれらの話題は避けては通れないようです。

◆まとめ◆

陸運支局の山屋卓郎さんからの総括

事業者もなんとか地域の足を維持しようと頑張っている。地域の皆さんも何とかしたいと思ってくれていることをとてもうれしく思う。もし、バスがなくなったら?と想像をしてみてほしい。自分ごとにして、今日のような議論を続けてほしい。

ファシリテーター・長野県NPOセンター代表理事山室秀俊さんからの総括

今日もさまざまな課題意識や、それに対するアイデアがたくさん出された。ここで話したことをここで終わりにするのではなく、地域に持ち帰って、地域で議論を進めてもらいたい。

 

◆それぞれのワークショップにフセンから◆

テーマ1「今の自分の地域の交通に満足していますか? その理由は?」

▼今は満足

  • 乗らないのでわからない
  • 駅から近く運行本数も多い。しいて不満があるとすれば大きな病院に行くのに不便なくらい
  • 同じ地区内でも山間部は不便。自分が住んでいるところは週3回くらい利用するくらいにほぼ満足
  • 自分の地区はJRもバスもあるので満足
  • 特に不自由を感じていない(住宅街在住)
  • 電車があるので長野駅までは行けるが、近隣の地区(柳原・長沼)に行くのが不便(豊野在住)
  • 支所内でバスを待てる。屋根も飲み物も椅子もあるし(鬼無里地区在住)

▼マイカーがあるので満足 ついつい乗ってしまう・・・、便利さ優先

  • バスが便利な場所に住んでいるが乗ったことがない、マイカーに頼ってしまっている。
  • 自家用車があるので満足
  • 今はマイカーで自分で動けるが、自分で動けなくなったら心配
  • 交通とはバスだけ?道路は?トンネル問題とか道路整備は?

▼やや満足

  • マイカーでしか動いていないことを申し訳なく思う
  • バス通勤、最終が20:30分で休日運休
  • 公共交通や化石燃料を使用しない移動にシフトしたい!!
  • 自分はほぼ満足しているが、体の不自由な高齢者のサポートが難しい

▼不満

  • 最終が早い。市街地で飲んで帰ってくるのにバスで帰れない
  • 本数が少ない
  • 休日の本数が少ない
  • デマンドバスが予約制で時間が合わない
  • そもそも電車やバスにみんな乗っていない!!
  • 料金が高い
  • 家の近くまで来ない、バス停が遠い
  • そもそも世帯数が少ないところはデマンドすら走らない

 

テーマ2「自分のために、家族のために、あったらいいなこんな地域交通」

【イノベーション】

  • ドローンでドアtoドア
  • シェアサイクル(電動キックボードとか)
  • 自転車ごと乗れる交通機関
  • 空飛ぶタクシー
  • 自動運転の実現
  • 高齢者でも運転できる車
  • 事故のない安全な交通
  • 運行状況がわかる(バス停などで今どこにバスがいるか、いつ頃バスが来るかなどがわかる)と利用しやすい
  • 燃料をCO2が出ない交通手段に変換してほしい
  • 通院用のバスシステム

【目的地と時間の選択】

  • 週末便で夜運行。9:30とか10:00頃
  • 自宅→病院→買い物→自宅で片道500円くらいの送迎バスがあったらいいね
  • 融通が効いて、見守り機能があるといいなぁ
  • 買い物連れて行ってくれる
  • 鬼無里⇔市街地ノンストップ便
  • 長野駅行き以外のバス。大きな病院までなど
  • 病院以外のいろいろな場所に行ける福祉有償輸送

【料金】

  • 中高大生のための鬼無里⇔市内200円!!!お願いします!
  • 通学に使うバス利用は安く
  • 高校生の通学無料
  • 料金が一律だったらいいなぁ(高齢者だけでなく市民みんなにおでかけパスポート)
  • 幼稚園送迎時用バスパスポート1回100円とか?
  • 低料金でいつでもどこででも乗り降りできる(小さくていい)車
  • 運賃の電子決済(ポイント還元)

【循環】

  • 地域の中を循環してくれる小型のバス
  • 公民館→地域の病院→スーパー→駅→
  • 自動の循環バス・他地区を結ぶバス

【乗り合い】

  • 家族でシェアできるサブスク
  • 地区内の乗り合いタクシー・小型バス
  • 近隣の人が助け合って必要な時に必要なところへ連れて行ってくれるシステム(コーディネート必要)
  • ご近所乗り合い連絡便
  • グループごと目的地へ。同好会などの仲間を連れて行く仕組み
  • 乗りたいときに乗れる乗合自動車?
  • 困ったときに同乗させてもらえる交通
  • 近所の人たちで目的地を揃えて一緒に買い物や外出ができるシステムがあれば良い(各家にタブレットがありそこに入力するなど)

【デマンド】

  • 予約し自宅まで迎えに来てくれる。自家用車でOK(ただし保険完備)。地区内自由運行手形
  • 前の日に電話予約して玄関まで迎えに来てくれ、上限キロ数範囲は同一料金で、それ以上は割増料金で利用できるもの
  • デマンドバスはバス停からバス停まで。スーパー・ホームセンターなどまで行ってほしい
  • 好きな時間に予約できる
  • タクシーのように利用できる交通、料金は安く
  • スーパーへの直行バス。月に2回くらいあったらいいなぁ~、かつら号乗り継ぎで
  • バス停がなくても行先を指定できる
  • どこでも乗車・降車できる公共交通

 

【その他】

  • 市街地に出た子どもたちのネットワークによる運転ボランティアで中山間地の地域交通を支える
  • イベント要素を取り入れた特別なバス(乗っている間地域のことを知ることができるはとバスみたいな)
  • 子どもや高齢者が利用しやすく乗って楽しい交通が理想。車体ラッピングとか!!
  • 登録が要らない移動サービス
  • 国民の足は国で供給

 

テーマ3「テーマ2を実現するために必要なもの(ヒト・モノ・カネ・情報など)は? クリアすべきことは? 地域でできることは?」

【イノベーション】

  • サイクルツーリズム。バスに自転車をそのまま載せられるように。サイクルイベントコースの創出
  • 日本の技術とアイデアならできます!!
  • 利用しやすくするマッチングアプリ
  • 実証実験。国の事業などに手を挙げる
  • 自動車メーカー(トヨタなど)との連携。中山間地に適した車を乗り合いバス(小型)など開発してもらう
  • 自動運転の車の利用したい人をマッチングさせるサイトの整備(車の導入、システム導入の経費が問題)
  • スマホで行きたいところ、時間を入力。タクシー会社が効率的な配車スケジュール作成し通知、OKしたら乗り合い、料金は割り勘

【目的地と時間の選択】

  • まずは今の路線、本数を維持するためにたまにはバスに乗る!!
  • 路線バスの利用者が多い時間帯の把握。どの時間なら路線バスの利用があるのか?を知る
  • バスの運行時間の見直し(本数が減っても・・・)
  • かつら号の停留所を善光寺・大門まで延長(ヒトモノカネ不要)
  • 地域ごとに曜日、場所を決めて運行するようにしたら(ただ、運転者がいるか不安)
  • 選択できる移動サービス、病院も店舗も飲食店も送迎付きにする(義務化)
  • ニーズに対してそれらを集約して運行経路を組み替える
  • つながりを強くする。予約含め誰が何時ごろどこへ行くかをコーディネートする人が支所にいて、何人かまとまったら発車。支所へ連絡する交通係を地域に置き、その人たちが定期的に集まって課題を話し合うか

【料金】

  • 公的資金の投入
  • サブスク(月額乗り放題○○○円)になれば私は買います!
  • 通学割引
  • 自然エネルギーへの転換
  • 何をするにも財源が必要なので、セミノルマとして3カ月に1回公共交通に乗って支援する
  • 利用回数によって料金還元される
  • 多くの人に利用してもらう。バスの時間を増すことで利用者が増えて料金が安くなる
  • 買い物などの送迎。一定の人が集まれば店舗や施設で出してくれるのでは?
  • 数字・データ(市の負担額一人当たりの負担額)

【循環】

  • 利用しやすいように工夫する。地域住民の理解・協力、市の財政が必要
  • 目的、場所そこを利用する人、自宅も一元管理して必要な時に循環するバスを走らせる(住自協・地区でのシステム作り)

【乗り合い】

  • 友達近所で困ったときに連絡し合える関係づくりとシステム構築
  • 近所で共通タブレット端末
  • 小田切地区のようにマイカーを利用してサロンや体操教室へ誰でも行ける環境を作る。そのためにはコーディネートと保険の問題をクリアする必要がある
  • 地域内で本当に乗る人と乗らない人を整理して、乗る人に寄ったシステムに
  • 地区内での登録による予約ができるソフトなど(乗り合いで飲んでも大人数で帰れる・・・料金安くなる)
  • マイカーによる移動支援
  • 私も鬼無里出身です。月1~2回なら鬼無里の高齢者の送迎可能です。協力者をリストアップしたらどうでしょうか?無料で可。

【デマンド】

  • ニーズに応じた利用者と目的地をマッチングする運行システム(AI?)

▼その他できること!!

  • 福祉輸送サービスの制限をゆるやかに
  • 自家用車利用輸送の保険、整備代の補助など
  • 地域たすけあい事業再編について地域の中で声をあげる
  • 具体的なニーズを調べるため、区長などに提案して、不満と思っている方にアンケートを実施する必要がある
  • ①から⑥まで全部について、特区の申請などで実験できるように
  • 自然エネルギーの売電利益を交通システムの経費に充てる。山にはスペースがある
  • スーパーなどの企画で買い物バスをお願いする
  • 健康でいる!!
  • 「電車・バスに乗ろうよ運動」各小学校で子どもと親向けワークショップ
  • イベントで路線維持。外部の力をコーディネートして活用
  • 同世代で話せる場を作る。80代カフェ、70代カフェ、40代、30代・・・。
  • 地域公共交通を守っていくという意識を持つことが大切。どんな便利なサービスでも利用者がいなければ成り立たない
  • 地域公共交通の積極的な利用。なくなったらどうなるのか?想像してみることも大切
  • 市報などで公共交通の斡旋を強化。山間地の活性化を含めて魅力を発信する

◆アンケートから◆

  • 多様な人たちからいろいろ意見が聞けて良かったです。みなさん地域の交通に関心が高く、このような人たちをパートナーとして一緒仕事をしたいと思いました
  • 利用者が利用しないと成り立たないという話、想像力を活かせるアイディアがありおもしろかった
  • たくさんの課題が出されて、情報収集ができた
  • 地域の課題を地域住民同士で話し合える場が必要と感じた
  • 問題の共有はできたが、行政や運行業者の働きかけはどうなるのでしょうか?また、住民への意識付けをするにはどうしたら良いのでしょうか?
  • 地域に関係なく交通の課題が同じところがある。大本から考え直すタイミングに来ていると思う
  • 今の問題だけでなく、5年後10年後にどうなっているかの視点で話をしてみたかった
  • 公共交通に限らず、地域の課題をざっくばらんに話せる機会はとても重要だと思った
  • 参加者から出た意見はどう反映されるか?
  • 改めて自分ごとと考えて想像することの大切さを感じました
  • 他地区の人たちと話すことで自分の地域だけでは出てこないようなアイデアがある。地域性にこだわらない話も大切
  • 陸運局の方の「普段使っていない人が、もしなくなったら・・・と想像するのは難しいという言葉が胸に響いた
  • 多くの知見、アイデアを共有する機会になりました。今後の活動に活かして、少しでも地域に役立つものにしていきたい

 

◆担当のつぶやき・・・◆

地域の交通の問題は、福祉や経済と切り離して考えることはできません。大人1人に1台マイカーが当たり前のようになっている長野市民。便利さと持続可能な地域の間で悩む今。今後地域の交通をどう守っていくのか?守る必要は実はないのか?とすれば本当に必要なのは何なのか?も含めてさまざまな視点から議論し、私たち自身の頭の中にイノベーションを起こしていくことが求められているのではないでしょうか?

来年度もこのテーマでみなさんと話してみたいと思っています。